![]() 以前《プルートには3つの子どもが》という記事で、冥王星に3つの衛星が発見されたことを解説しました。 そのプルート(冥王星)が太陽系惑星の仲間からはずされました。 TVなどで大きく報道されましたので、ご存知の方も多いと思います。そこで、決定までの経緯や学会での議論などを簡単に整理してみました。 国立天文台のホームページをみると、1999年に「惑星の座を失うか、冥王星」という記事が載っています。 だいぶ前から、いろいろな議論がなされいるのが分かります。 続きをよむ...... 2010年に日本で国際化学オリンピックが開催されることが決まったそうです。僕のバックグラウンドは化学であるにもかかわらず、化学オリンピックというものを知らなかったので調べてみました。オリンピックと言っても、4年に一度ではなく、毎年開催されているもののようです。今年が第38回で、日本開催がきまったのは、2010年の第42回。 国際化学オリンピックは1968年に東欧で始まった高校生の学力試験が発展したもので、もっと有名な数学オリンピックとは兄弟のような関係にあります。今では約60ヶ国が参加する大きな大会になっているそうです。因みに日本の初参加は割と最近で、2003年ですが、毎年好成績を収めています。開催は毎年7月と決まっています。約10日間の期間で実験問題(Experimental Examination)と筆記問題(Theoretical Examination)についてそれぞれ5時間の制限時間で個人戦として競われるものです。言語は参加者が選択することができるルールになっているので、通常は日本語で受験しているようです。参加者の上位1割に金メダル、上位2割までに銀メダル、上位3割までに銅メダルが授与される方式です。 各国代表は4名以内と決まっていますが、それぞれの国内でのコンテストで勝ち残ったメンバーから選抜されます。 日本ではオリンピックの前年の7月〜8月に開催される全国高校化学グランプリで好成績を収めた高校1,2年生から候補者を選び、オリンピック開催年の春の訓練合宿で最終選考が行われるパターンを取っています。 大会期間中には、スポーツやゲームを一緒に楽しんだり、開催国独自の文化を体験する機会も用意されており、国際交流を深めるよいチャンスになるよう企画されています。 2010年の日本大会への出場者は、2009年に高校1,2年生。現在、中学1,2年生ということになりますね。ちょうど僕の息子がこの年齢です。このオリンピックに興味を持ってくれるかな? 国際化学オリンピックのホームページ(http://icho.csj.jp)に出ている過去の問題を見ると、かなり難しいですね。大学の教養課程レベルまでしっかり勉強する必要がありそうです。 僕は化学を生業としているものの、もう一度、高校の化学を真剣に勉強しないとよい点は取れないように思います。でも、ウチの息子でも、このBlogを読んでくれたどなたかでもチャレンジする方がいらっしゃれば、できる協力はしますよ。 国際化学オリンピックのホームページには 大会規則や過去の問題、日本代表の成績も掲載されています。ご関心のある方はどうぞ覗いてみてください。 また、化学以外にも、数学・物理・情報科学・生物・天文の分野でも、毎年、科学オリンピックが開催されています。 毎年「オリンピック」が開催されるってのはなんだか違和感がありますが、国際大会なので「オリンピック」と言っているのでしょうか?因みに、「全国高校化学グランプリ」の方は、「化学の甲子園」と呼ばれているそうです。こっちはぴったりしたネーミングですね。 人気blogランキング 「自然科学」に登録中 (今日の順位は?) サッカーワールドカップ真っ最中ですので、ここでもサッカーの話題を。
![]() Natureの6/9付けのオンライン記事に、サッカーのゴールのパターンに関する数学的解析に関する分析が掲載されました。(Natureにも遊び心がありますね!!) サッカーでは「一点目が入ると、立て続けに点が入りやすくなる」という噂があるそうですが、これまでのワールドカップや、東西ドイツのサッカーリーグのデータを統計学的に解析して、前述の噂が正しいことを裏付けることができたそうです。この研究は、イギリス、エジンバラのHeriot-Watt大のMartin Weigelという数学者によるもので、近々、ちゃんとした論文誌にも掲載されるらしく、Preprintも紹介されています。(僕は数学に詳しくないので、原論文では要約の部分のみを読んでいます。読者の方からのリクエストがあれば、もうすこし詳細を勉強してみますので、ご連絡を。) サッカーの得点パターンは、確率論的にランダムに入るという前提で数学モデルを組むとどうしても説明できないそうです。むしろ、得点が入るごとに、次の得点の可能性があがるという傾斜分布のモデルを採用するとピッタリと当てはまるというのです。 単にチームの実力に比例した得点になるのではなく、得点が入ることでチームに自信が満ちてきてどんどん調子づいていき、さらに得点が進むという効果があるようです。Weigel氏はこのような効果を”Football Fever”と読んでいます。 このような効果は下位リーグの方が顕著に見られます。ワールドカップの予選での最多得点が、オーストラリアが31-0でサモワに勝った2002年の試合であるのに対し、決勝トーナメントでは、1954年のオーストリア対スイス戦で7対5というのが最多得点の試合だそうです。また、東西統一前のドイツのサッカーを分析すると、東ドイツのリーグの方が、西ドイツのブンデスリーガ(Bundesliga)より高い得点が出ているそうです。これは、下位リーグでの方がチーム間の実力の開きが大きく、Football Fever効果が出やすいのではないかと考えています。 Wiegel氏は、今年のワールドカップ出場主要国について、「1点目の入りやすさ」とFootball Fever効果を分析してグラフにしています。もちろん、1点目が入りやすく、かつ、Football Fever効果を活かすことができるチームがつよいということになりますが、こんなチームとしては、第一陣はブラジル・メキシコ・ドイツ・スペイン、それについで、オランダ、イタリア、アルゼンチン、イングランドってところの様です。アルゼンチンやスコットランドはFootball Fever効果がほとんど見られないチームで、逆にオーストラリアはもっともFootball Fever効果が顕著なチームで点が入ると50%も可能性が改善しているのです。 この分析には「主要国」が載っているだけで、決してすべての国が載っている訳ではないのですが、嬉しいことに日本はちゃんと載っています。 日本は「1点目の入りやすさ」は低い一方、Football Fever効果は40%と高いという分析結果になっています。 オーストラリアと比較すると、日本は「1点目の入りやすさ」、Football Fever効果ともに低いのですね。ということは、先日のオーストラリア戦で、先取点を取ったにも拘わらず、負けてしまった日本。どう考えたらよいのでしょう?せっかく、開始早々に1点入って、調子に乗ってきたのに、どこかうまく歯車が回らずに追加点が取れなかった日本、終盤には、先取点によるFootball Fever効果が薄れてきたところに、オーストラリアが得点して、Football Fever効果は一気にオーストラリアの味方になってしまったってことでしょうか? 昨日のアルゼンチン対セルビア・モンテネグロ戦の6対0は、Football Fever効果は関係ないってこと?なんて、いろいろ疑問も沸いてきますが、今回のお話は過去のデータの分析に基づく解析の話なのです。予想にはあまり役にたたないかもしれませんね。 でも、数学でこんなことまで考えられるというのは興味深い話だと考え、紹介しました。 さて、クロアチア戦は........ ちなみに、Weigel氏の解析にはクロアチアは載っていません。残念!!! 人気blogランキング 「自然科学」に登録中 (今日の順位は?) 任天堂が開発中のゲーム機Wiiに最新のMEMS技術を利用したコントローラーが採用になるようです。Wiiサイト(上記)をみると通常のリモコンと合わせてNunchak(ヌンチャク)という拡張コントローラーが同梱される予定のようですが、このNunchakには3軸モーションセンサーが搭載されているおり、傾きや動きの変化を検出できるとなっています。 5月の始めに、アメリカのAnalog Devices Inc.とST Microsystemsという2つのベンチャーが共同で、MEMS技術による3軸加速度センサーを任天堂に供給することを発表しました。3次元加速度センサーを用いれば、コントローラーを傾けたり振ったりする動きを検出することができるので、その動作をゲーム中のキャラクターの動きに反映させることができるのです。Nuchakuを振るスピードに合わせてキャラがゲームの中で動き回るなど、いろいろな設定が可能になります。 ところでMEMSってなんでしょうか? マイクロマシンとも呼ばれるMEMSはMicro Electro Mechanical Systemの略です。 ◆インクジェットプリンターで液晶ディスプレイを作るの項目でも書いたような半導体の微細加工技術を活用して作成された小さな部品を組み立てて作られた非常に小さな機械やロボットのことを言います。Micro Electro Mechanical Systemとは日本語で電気機械システムです。単に「小さな部品」というのではなく、それを一つのシリコン基板の上で組み合わせることでシステムとして機能させるところに面白さがあります。 MEMS技術をもう少し知りたい方は、以下のサイトをどうぞ。 http://ja.wikipedia.org/wiki/MEMS ちなみにWiiの発売時期は2006年第4四半期となっていますので、今年の10月〜12月ごろに発売されるものと思われます。 (半導体技術では日本は優位にあるはずなのに、MEMSなどの将来技術でアメリカの方が先行しているように感じます。やはり悔しいです。) 人気blogランキング 「自然科学」に登録中 (今日の順位は?) ブッシュ大統領が19日の講演で、数学と科学教育のてこ入れの方針を明らかにしたとの記事が5月20日の日経新聞夕刊に載っていました。7万人の教師に5年がかりで研修を実施する一方、3万人の非常勤講師を全米の学校に派遣する計画だそうです。。日本では、大学生・高校生の数学や科学の水準が年々低下してきています。ちょっと前までは「科学立国 日本」などといわれていたのにも拘わらず、なぜ数学や科学のレベルが低下してしまってきたのでしょうか。「ゆとり教育」のせいなのかもしれませんが、今はレベルが低下してきた原因探しをするより、今後どうしていったらよいのかの対策を決め、はやく行動を始めることが必要だと思います。 一般に国が成長をするパターンは、以下のようになっていると思います。 1)まず製造業(第二次産業)が立ち上がりのGNPを押し上げる 2)金融を中心としたサービス業(第三次産業)が主流になり、国際化が進む。 同時に、製造業の国内空洞化が進行する。 この次にくる「第四次産業」は何かというと、「創造産業」なのです。何を創造する産業になるのかはまだ明確ではないように思いますが、一つは情報産業でしょう。 僕は第四次産業のもう一つの形があると思ってます。新概念の製品に必要な知的所有権を生み出し、事実上の標準(デファクト・スタンダード)を作り上げるという形の産業です。研究開発産業とでもいいましょうか? 日本が「科学立国」と言っていたころは、上記の1)のステージにいたのですね。一方、アメリカはだいぶ前に2)のステージに入っていました。バブル以降の最近の日本は、2)のステージになっていますね。 2)のステージでは経済の主役は金融など第三次産業なので、社会全体として文科系重視になってくるのだと思います。このような時代背景では、学生から見ても、やはり文科系の人気が高くなり、理科系離れが進行してきたのだと思います。この意味では、現在は、アメリカも日本も似た状況にいるといえると思います。 今後、主流となる第4次産業は、情報産業であれ、研究開発産業であれ、科学系の知識体系がバックボーンになることは間違いないと思います。ですので、理系教育の強化は大切なことなのです。この点はきっと多くの方が気づいているのでしょう。ただ、どのように行動を起こすかが大切なのです。 今回、大統領が科学教育強化の方針を出したということは、アメリカは本気です。 日本も遅れを取ってはいけないと思います。 今回のアメリカの施策で触れられている3万人の非常勤講師には、米航空宇宙局(NASA)のエンジニアなども含めるそうです。何かの教科を教えるというより、きっと、研究開発の面白さを子供や学生たちに伝えるということが狙いなのだと思います。 同様のことは日本でもすぐに始められます。 新エネルギー・産業技術研究機構(NEDO)の研究者や企業の開発者を高校や大学に派遣して、生の声を伝えることができると思います。特に企業の研究所は日本中にありますから、日本中の高校で講演会ができるとおもうのですが...。チャンスがあれば、僕も喜んで高校などに講演に行きたいと思っています。 ちょっと調べてみたのですが、このようなボランティア的な取り組みは日本ではまだあまりないようですね。 人気blogランキング 「自然科学」に登録中 (今日の順位は?) 今すぐにできるという話ではありませんが...
![]() 液晶ディスプレイなどを作るための製造プロセスにインクジェットの技術を活用しようとする研究開発が進んでいます。 インクジェット技術は、ヒューレットパッカードやキャノン、エプソンなどが技術開発を進めてきたもので、現在ではさまざまな高解像度カラープリンターが数万円という低価格で販売されていますね。インクジェットプリンターがでてくるまでは、高解像度のカラープリンターといえばレーザープリンターしかなく、少なくとも20万円はする高価なものでした。インクジェット技術のお陰で、デジカメで撮影した高解像度の画像を自分で手軽に印刷できるようになってきました。 このインクジェット技術を産業用に応用しようという研究開発が各方面でされています。その一つが、インクジェット技術を用いて微細な回路を作ろうという試みです。 インクジェット技術は1滴あたり数pLという極めて少量の液滴をヘッドから正確な位置に打つことができる技術です。(1pL=1×10^-12L) 液晶ディスプレイの1つ1つの画素を駆動する回路やLSIなどの半導体の回路は非常に細い回路や素子が複雑に、しかも多層に組み合わさったパターンになっています。この回路は、現状では以下のような工程を繰り返すことにより、数十工程もある複雑なプロセスで製造されています。 1)光が当たると固まる樹脂を塗る 2)必要な回路を描いたパターンを介して光をあてる 3)光の当たっていない部分の未硬化樹脂を洗浄して除去する 4)(積層した層間が導通しないよう)絶縁物を塗布する 5)必要な電極などを形成する この製造プロセスでは、それぞれの工程で、液体を使用したり。真空を使用したりと非常に複雑な作業をしています。 LSIなどの半導体は、現在では1mm角以下の小さなものもあり、実際には 非常に小さいサイズになっていますので。このような複雑なプロセスでもまだ何とかなるのですが、液晶ディスプレイは高解像度化とともに大画面化もすごい勢いで進んでいます。大きな面積に小さなものを正確に並べる必要があるのです。 回路が小さいとはいえ、LSIなどの半導体と液晶ディスプレイでは回路の大きさに10倍以上の違いがあります。現時点の回路の線の幅は、最先端のLSIの場合には0.1~0.3μm(1ミクロンは100万分の1メートル)であるのに比べて、液晶ディスプレーの駆動回路では数μm以上のものが使用されているようです。インクジェットでの1滴は小さいとはいえ、数pLありますので、いきなり0.1μm幅の線を描くのは難しいのですが、10μm程度なら何とかなりそうです。 こんな背景から、液晶ディスプレイの製造工程に応用することなどを想定しての研究開発が活発化しています。成功すれば、ディスプレーの低コスト化や大画面化に大きく貢献することができると思います。 実際の研究開発の場面では、インクジェットできるような回路形成用の各種材料を作り出すことが焦点になっています。 Nature(vol.440、06/4/6発行)には、インクジェット技術を用いて、これまでの真空プロセスで作られた回路と同等の導電性を達成することができる新規の材料が紹介されています。この成果は、日本の研究者たちの成果です。 2010年頃には、インクジェット技術で作られた最初のディスプレイを見ることが出来るようになるのかもしれませんね。 人気blogランキング 「自然科学」に登録中 (今日の順位は?) どうしてHwang元教授のような事件がおきてしまうのでしょうか?
そのほかにも、これまでいくつかの有名なねつ造事件がありました。 記憶に新しい話では、2000年ごろ、遺跡発掘ではゴッドハンドと呼ばれていた"民間考古学研究家"藤村新一氏の事件があります。自分で石器のかけらを埋めているところをマスコミの隠しカメラにしっかり撮影され、その証拠を持って、マスコミが厳しく追及し、彼のそれまでの業績がほとんどねつ造であったことが判明したのです。 このケースの場合に、藤村氏は「ゴッドハンド」と呼ばれ名声を得たものの、収入が増えたわけでもないので、名誉欲が引き金になっていたのだと思います。 一方、今回のHwang元教授の場合には、ちょっと違う面があるように思います。 たしかにHwang元教授もねつ造した成果のお陰で高い名声を得ることができました。ただしそれだけがモチベーションではなかったように思います。彼の研究グループは30名を超える規模だったようですし、また多くの共同研究者がいますので、100名規模の研究者が関連したいたことになると思います。つまりそんな大きなグループのリーダーがHwang元教授だったわけです。 研究リーダーの仕事にはいろいろな面があります。私も企業の研究所での研究を15年以上経験しており、最近は研究リーダーの役目を担っています。その経験から私見を書かせていただきます。 研究リーダーはもちろん技術的に主導する立場にあるのですが、大きなテーマでは自分の専門以外の技術のウェイトが高くなり、したがってプロジェクト全体へのリーダーの技術的関与は薄くなっていくことになります。研究リーダーの役目は、1)研究のターゲットを決める、2)必要な関係先に説明し理解してもらう、3)必要な予算、人材、協力関係を獲得する、ということが重要になってきます。 会社も国も同じだと思いますが、「うまく行きそうな」研究テーマには資金や人材を提供してくれます。ここで問題なのはうまく行きそうかどうかをだれが判断するのかってことです。提案している研究者・研究リーダーはある程度客観的にその難しさは分かっていると思いますが、対外的に説明するのは協力を得ることが目的ですから、こうすればうまく行くそうだというストーリーで説明をします。そのような説明を聞いて、その技術分野では「素人」である官僚や経営者が判断するのです。ですので、その説明の中できちんとハードルの高さを説明するのが、研究リーダー自身にとっても大切なことだと思うのですが、残念ながらそれをしないで「よい話」だけをする人も少なくありません。 研究テーマに一旦、予算・人材が与えられると、今度はそのテーマは絶対に成功させなくてはならないというプレッシャーが研究リーダーにかかることになります。まあ、一種の契約ですので、これは仕方ないですね。 でも、研究開発は本当はうまく行くかどうかは不確実なものなのです。ターゲットやアプローチが正しくても、必ず期待通りの成果がでるものではないのです。 期待とは違う結果が出て、がっかりして、でも、そこから誰も予想しなかった新しい発見があったりして.... そんなところが研究の面白いところであり、醍醐味なのです。 Hwang元教授の場合には、説明して予算を確保するまではよかったのですが、期待通りの成果が得られなかったときに期待通りの成果を「作って」しまったのでしょう。このサイクルを何回も繰り返し、泥沼に陥ってしまったという展開だったように想像します。 研究リーダーにはプレッシャーに耐えられる精神的強さや、すべてが期待通りにはならないという開き直りも大切な素養です。また、ハードルの高さについてもきちんと説明する誠実さも大切です。とにかく大変な役目ですが、テーマがいつの日にか成功することを夢見て、粘りつづけるのです。このような精神構造のどこかがうまく働かないと、状況に耐えられなくなり、データをねつ造したりしてしまうことが起きるのでしょう。 結局、Hwang元教授は論文をねつ造しようとしたその時点で、研究リーダーとしては失格していたのです。そのポジションの剥奪は結局時間を問題だったのだと思います。 人気blogランキング 「自然科学」に登録中 (今日の順位は?) 韓国のHwang(黄)教授の発表したES細胞に関する論文がねつ造だという報道が昨年末に報道され、その後、結局、Hwang教授はねつ造を認め、ソウル大学の教授も懲戒免職になりました。
ねつ造した論文をもとに手に入れた「最高科学者」(韓国)や「Research Leader of the Year」(Scientific American)という称号ももちろん剥奪されました。 Hwang教授の研究は主にクローン技術に関するものです。 クローン技術とは簡単にいうと生物のコピーのことです。遺伝子的に全く同じ生物または細胞の集合体をクローンといいます。未受精卵の核を取り出し、代わりにコピーしようとする細胞の核を注入してクローン胚を作ります。この細胞が分化・成長することで元の細胞と同じ遺伝子を持ったコピーができるのです。 Hwang教授らは、患者の細胞からクローン胚を作り、さらにES細胞を作成することに成功したという論文を世界で初めて書いたのです。(Science 2004/3/12 および 2005/6/17) ES細胞は身体のどのような細胞にも成長できる性質を持っているため多能性幹細胞とも呼ばれているものです。つまり、この技術を発展させていくことができれば、患者の内臓や皮膚の細胞を用いて、正常な内臓や皮膚を作ることができるようになると期待されます。新たに作られた内臓や皮膚は遺伝子的には元のものと全く同じですので、移植しても拒否反応などは起きないと思われます。このような夢のような治療技術の基礎となる研究成果に関する論文だったのです。 ところが共同研究者の一人Schatten教授(米国)から、Hwang教授の不正に関する指摘があり、マスコミなどが動き、調査委員会が設置され、論文がねつ造であることが判明しました。Schatten教授の指摘からねつ造であることの結論がでるまでわずかに2ヶ月。 一方で、Hwang教授のクローン犬「スナッピー」の成果(Nature 2005/8/4)については本物であることが、ソウル大学の調査委員会や米国立衛生研究所(NIH)の調査で確認されたという最近の報道もあります。 クローンって何?:文部科学省 http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/shisaku/kuroun.htm 人気blogランキング 「自然科学」に登録中 (今日の順位は?) プルート(Pluto)っていってもミッキーマウスのペットの犬のことではありません。冥王星のことです。太陽系のほぼ一番外側を回っている惑星のことです。僕たちの子供のころは、太陽系の惑星は「すいきんちかもくどってんかいめい」(水、金、地、火、木、土、天、海、冥)の順番だと教わっていたのですが、数年前の時機には海王星との順番が逆転して「すいきんちかもくどってんめいかい」(水、金、地、火、木、土、天、冥、海)になっていると言われていました。でもこれは昔の観測が間違っていたから訂正されたものではないのですよ。冥王星がとても細長い楕円軌道を描いているため、時機によって太陽からの距離が海王星と逆転することによるものです。 でも現在は、もとの「すいきんちかもくどってんかいめい」(水、金、地、火、木、土、天、海、冥)に戻っているそうです。この順番逆転は1979年〜1999年でした。因みに冥王星は太陽の回りを248年かけて周回しています。 この冥王星に3つの衛星があることが発見され、Nature(vol.439、06/2/23発行)に掲載されました。 冥王星は1930年に発見され、その冥王星にはカロン(Charon)という衛星があることが1978年に発見されていました。このカロンという衛星は直径が1200km程度で、太陽系でもっとも小さい惑星、冥王星の直径2300kmの約半分もあるのです。ですので冥王星とカロンの組み合わせでは、回転重心は冥王星とカロンの中間にあり、そこを中心に冥王星とカロンが回っているそうです。今回の発見は、ハッブル宇宙望遠鏡という高性能な望遠鏡での観察による成果です。 カロンとは別にさらに2つの衛星(P1、P2)があることが発見されたのです。P1、P2は半径が50km程度と非常に小さくこれまで観測手段では感度が不足して発見できなかったのです。 ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている4096×2048ピクセル(800万画素)のCCD2台を活用し、今回の観測がなされました。この2つのCCDは50ミクロンの間隔で並んで配置されており、実施的に4096×4096ピクセルの1600万画素相当の高解像度で撮影することができるのです。さらに今回は、475秒という長い露光時間を用いて、小さな弱い光もちゃんと取り込めるような設定で撮影されました。このような長時間露光の場合、地球の自転や天体の公転の影響で星の場所が移動してしまうので、コンピュータープログラムで冥王星の位置を追尾するように設定してあります。 その結果、S/N比(Signal/Noise比)35という良好な状況での撮影に成功しました。 P1やP2からの光は冥王星からの光の数1000分の1ということですので、非常に難しい撮影だったと思います。発表までには、撮影されたP1やP2の画像が、単なるゴーストや冥王星からの光による散乱光のいたずらでないことを確認するのに、研究者たちは非常に苦労した点ではないでしょうか?論文の中にはその点はあまり詳しく記載されてはいないのですが、私は本当の研究の大変さや面白さはこのあたりにあるように思います。 また、日にちを開けた撮影像を解析することによって、以下のようなことも推定できることが報告されています。 ・P1、P2はカロンと同じ面内の楕円軌道で回っているおり、冥王星—カロンと回転重心は同じであること。 ・カロン、P1、P2はもともと冥王星になにか隕石のようなものが衝突して冥王星から飛び出した冥王星の「かけら」であり、以前はもっと冥王星に近い軌道を回っていたが、徐々に遠ざかりつつあること。 ・冥王星の回りには、3つの衛星の他にももっと小さな衛星が回っている可能性があること P1、P2に正式な命名はまだされていないそうです。今年中には命名されるだろうとのことですが、どんな名前になるのでしょうか?楽しみですね。 冥王星は、惑星探査機が訪れていない唯一の惑星でもあります。今年の1月にはNASAが探査機ニューホライズンを打ち上げましたが、順調にいけば、2015年には冥王星に到着する予定だそうです。冥王星の映像を見る日が来るのかもしれません。 ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された天体写真: 国立天文台 http://th.nao.ac.jp/openhouse/1998/hst/index_hst.htm 冥王星の説明: wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/冥王星 人気blogランキング 「自然科学」に登録中 (今日の順位は?)
DNAを複製する方法にPCR法(Polymerase Chain Reactionがあります。
DNAをDNAポリメラーゼという酵素で複製する方法です。 DNAは、「A」「T」「G」「C」という4種類の塩基が重合した鎖が2本らせん状に絡まった構造をしています。この2本の鎖では、「A」と「T」、「G」と「C」がそれぞれペアになって水素結合でがっしりと繋がっています。 このDNAの2本鎖を温度を上げると、塩基のペアをつないでいる水素結合が解けて、DNA鎖は一本ずつになります。一旦温度を下げて、DNAポリメラーゼという酵素を作用させると、それぞれの塩基(「A」「T」「G」「C」)とペアになる塩基を順番につないでいって、もとと同じ構造(=ATGCの配列)をもったDNA2本鎖が2本作られることになります。 この状態から、さらに温度を上げると、2本のDNA2本鎖がばらばらに解け、4本の1本鎖になります。ここでまた温度を下げ、DNAポリメラーゼを作用させると、4本のDNA2本鎖ができることになります。つまり、DNAポリメラーゼが存在する状態で系の温度を一回上下するとDNA鎖は2倍になるのです。一回ごとに2倍、十回なら1000倍、20回なら100万倍のDNAを複製することができるのです。 ただし、DNAポリメラーゼが仕事を始めるためには、プライマーという短い塩基配列が必要になります。このプライマーはATGCの塩基配列がぴったり合うDNAの部分に水素結合でくっつき、これをDNAポリメラーゼが認識して、複製がはじまるのです。 増幅したい部分の近くにある特徴的な塩基配列をもったプライマーを一緒に入れて、PCR法を行うことによってごく少量しか採取できなかったDNAの必要な部分を「増幅」することができるようになりました。 増幅過程のモニタリングには、いろいろな方法がありますが、蛍光測定がポピュラーです。DNAポリメラーゼによるDNAの複製反応が進行に比例して蛍光を発するような化合物を系内に入れておき、発光している蛍光の強度を測定する方法です。 リアルタイムPCRとは、PCR法でのDNA増幅過程をリアルタイムでモニタリングし、解析する方法です。 このために必要な、温度を上下させる機構(=サーマルサイクラー)と蛍光光度計を一体化したリアルタイムPCR用の装置が販売されています。大きさは、シンプルな機能のもので、家庭用コーヒーメーカーを少し大きくした程度の20×30×30cm程度と非常に小さいです。サンプルを入れてから約30分〜1時間程度でDNAの増幅と蛍光物質による検出が完了してしまうのです。それでも約400万円とかなり高価な装置ですが... 東大の海洋研究所のグループはこのような装置を調査船に載せてマリアナ海溝の近くまで行ったのでしょう。 同じウナギといえども、種類が違えばDNA配列には違いがあります。 日本のウナギとアメリカやヨーロッパのウナギのDNA配列の異なる部分を選び出し、 そこをプライマーとして使って、リアルタイムPCRの装置にかけ、DNAが増幅されてくるようなら サンプル中には日本のウナギのDNAが含まれていることが確認できるのです。 (ヒトのDNA鑑定にもこの方法は使用できるのかもしれません。 ただし、PCR法でのDNA増幅の際には稀ではありますが間違いが起きるので 信頼性を非常に高く保つ必要のある、ヒトのDNA鑑定などには不向きな気がします。) 人気blogランキング 「自然科学」に登録中 (今日の順位は?)
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